Powered byつなげる
多胎家庭が本当に必要とする支援とは何なのかを考えるために、「ふたごハウス」に訪れる尼崎市内在住の双子のママ4人にご協力いただいて、座談会&個別インタビューを行いました。
子どもとの日々は「楽しい!」「嬉しい!」もあるけれど、そればかりではないのが現実。双子育児の日々で、どんな大変さや困難さがあるのかについて、ざっくばらんにお話しいただきました。
その内容をさらにうかがうべく、個別にインタビューした内容を紹介します。
4人目は佐藤(仮名)さん、4歳5か月の双子のママです。
妊娠中に引っ越してきた土地勘のない、身近に頼れる人が少ない場所での双子育児のこと、またご自身も子育て真っ只中でありながら多胎家庭支援に取り組み始めた思いについて、お話をうかがいました。
※座談会は2023年11月、個別インタビューは2024年1月に実施。座談会&個別インタビューの内容を再編集して記事にしています。
- 出身地から遠く離れた、住み慣れていない尼崎市に引っ越してきた翌年にご出産されたんですね。
佐藤さん:夫の姉が近くに暮らしていたものの、そのほかの知り合いがいなくて。初めての土地で、初めての育児。土地勘がなかったので、保健所や遊び場、困り事の相談先など、これから子育てしていく上で知っておきたい場所がわからなかったですね。
- 妊娠中に、いろいろ情報を集めたりされたんですか?
佐藤さん:それが妊娠中はつわりがひどくて全然動けなかったんです。ほとんど寝たきりで、外にも出られないくらいで。やっと動けるとなったのが、里帰りの2カ月前くらいかな。でも、つわりで仕事を休んでいた分、その間は働いて。あっという間に里帰りの日が。以降も切迫早産のために入院になったので、外に出られなくて。結局、情報は出産後にインターネットで調べて得ましたね。
- 出産後はどんなことが壁になったりしましたか?
佐藤さん:私は出かけたい派だから、部屋の中にいるよりは外に出かけたくて散歩したり…家の近くにつどいの広場があったのでそこに行ったり。でも、最初はつどいの広場に1人で双子を連れていくことができなかったんです。
- 1人で行けなかったというのは、物理的にということですか?
佐藤さん:気持ちの面ですね。2人を連れて行っても大丈夫なんだろうかって。家の中でもわちゃわちゃしているのに、ほかの子がいる場所に行ったらどうなるんだろうとか、双子用ベビーカーは置ける場所があるのかなとか、大人は私1人なので子どもたちがずっと泣いていたらどうしようとか。
いろんなことが心配で、不安で。母がこっちに来てくれた時に一緒に行ってもらったんです。復職に向けて、ちょうど保育園を決めないといけない時期でもあったので、見学にも一緒について来てもらいました。
- お出かけの不安がある中、実際に行ってみたらどうでしたか?
佐藤さん:母も一緒だったから行けましたし、気持ち的にも楽でした。その時に、つどいの広場のスタッフの方から「同じくらいの月齢の双子ちゃんが来てるよ」と教えてもらい、「いつか会えるかな!」という楽しみが増えたので、その後は1人で双子を連れて行けるようになりました。
その話に聞いていた双子のママとは、近所を散歩している時に公園で出会えて、「わぁーーー!」みたいになって(笑)。今も仲良くしています。
- たまたま散歩をしていた時に出会えるなんて、すごいですね! 嬉しいですね。
佐藤さん:その出会ったママが行動的で、いろんな情報が入ってくるし、バスや電車にもどんどん乗っていくみたいな日々が始まりました。私はバスや電車には「絶対に乗れない!」という気持ちだったんですけど、そのママが「大丈夫! 乗れるよ」みたいな感じだったから。初めての電車移動も、そのママと阪急西宮ガーデンズまで行きました。
たった1駅だけでしたが、「あぁ、乗れるんだ」ということが自信につながりました。そのママが今度はふたご会に行くというので、私も一緒に行って、そこでたくさんの双子のママパパと出会うこともできたんです。
- 1人だったら心配で不安なことも、誰かと一緒にならできることがありますね。
佐藤さん:そうなんです。自分1人だったら、子どもたちがもっと大きくなってからしか、電車には乗らなかっただろうし、電車で移動しないと行けない場所には行けなかったと思います。いろいろ、想像してしまうんですよね。
電車の中で2人が泣きわめいたらどうしたらいいんだろうとか、その時に急遽、途中下車したとして、エレベーターがなかったらどうしようとか。悶々と考えてしまっていたんです。だから、電車の移動は大変だったけれど、電車に乗れたこと自体が嬉しかったんです。
- 尼崎ふたごLINEの活動に関わられるようになったのは2021年からなんですね。
佐藤さん:今、4歳の子どもたちが2歳になる前くらいだったかな。中原さんが「多胎家庭のママパパのためのコミュニティ『尼崎ふたごLINE』を始めるので、誰か手伝ってくれる人はいませんか?」と呼びかけているのを見て、連絡しました。その時は、自分自身も子育てでしんどい時だったから、「ちょっと手伝えたらいいかな」くらいだったんですけど。
もともと、もう少し子育てが落ち着いたら、双子ちゃんの何か力になれるようなことができたらいいなとは思っていたんです。それが「今か・・・」みたいな(笑)。やろうと思いました。
- 「双子ちゃんの何か力になれるようなことができたら」と思っていたのは、どういった思いからですか?
佐藤さん:さっき話した近所の双子のママとの出会いを通して、身近に同じような経験をしている人がいることはなんて心強いんだろうと思いました。1人育児とは違うところがいっぱいあるので、1人子育てのママと話をしていても共感し合うことが難しい場合があります。
それが、双子のママだったら、共感し合えるところが多いし、悩みも共有できる・・・そのおかげで、しんどい時も気持ちが楽になれたから。こういうつながりがすごく大切だなと思ったんです。
私はあの双子のママとつながることができたけれど、そういう出会いはなかなかないんじゃないかなと思ったから。双子のママ同士がつながるきっかけづくりをしたいと漠然と思っていたんです。
- NPO法人つなげるのことは以前から知っていたのですか?
佐藤さん:コロナ禍に「ふたご応援物資」として多胎家庭に支援物資を届ける取り組みをされていたんです。その時に、絵本を申し込んで送ってもらったことがありました。
ふたご応援物資も、その近所の双子のママから「こんなのがあるよ」と教えてもらって。それを教えてもらっていなかったら、今、NPO法人つなげるや中原さんとはつながっていなかったと思います。こういう情報を知っているのと知らないのとでは、差が大きいと感じています。
- 確かに。大きいですよね。
佐藤さん:尼崎ふたごLINEの活動で、私たちが知り得た情報は登録してもらっている人たちに共有しています。そのLINEを見て初めて知ったという人もいますし、登録していない人に聞くと「知らなかった」という人もいます。
市でも健診時などに情報共有されているのですが、たとえば支援制度など本当なら今からでも利用できるのに、情報を得るのが先になってしまうと、利用開始が遅くなったり期間が減ったりしてしまうんですよね。
尼崎ふたごLINEで活動していると、情報格差というのでしょうか。そういう問題を感じます。
- ご自身も2歳の双子を育てている渦中でしんどい時期に、応援する側にまわられたんですね。
佐藤さん:確かに、その時もしんどかったんですけど。一番大変でしんどかったのは、1歳前後の頃だったから。今、この時にも、あの時の自分と同じような状況の人がいると思うと、居ても立ってもいられないじゃないけれど…
- つながりができるかどうかで、その人の、その後の人生が変わってきますもんね。
佐藤さん:ほんのちょっとのことだと思うんですけど、何かが変わってくるんですよね。
- 誰ともつながっていないと感じていた時は何がしんどかったんでしょうか?
佐藤さん:わかってもらえない、わかってくれる人がいないという感じでしょうか。もちろん、夫も協力的でしたし、大変さもわかってくれていたので、まわりが全然理解してくれない、外にも出られない、誰ともつながっていない人よりは恵まれたほうだったと思うんですけど。そう思うからこそ、そういう状況にいる双子のママのことを考えると、何かできないかなと思うんです。
あと、私自身のことで言えば、1人で頑張ってしまうほうだったんですよね。だから、しんどかったのかな。1人で頑張ってしまうママに、「1人で頑張らなくてもいいよ」と伝えたいと思いますね。
- どういうところで「頑張りすぎていた」と思いますか?
佐藤さん:自分でどうにかしなきゃ、1人で頑張らなきゃと張り詰めていました。今から振り返れば、そう思わず、もっと人の手を借りたらよかったんじゃないかなと思うんです。子どもたちが0歳の時は復職前で働いているわけではなかったので、経済的にゆとりもなく、ベビーシッターなどもお金がかかるからと利用してきませんでした。
でも、夫に子どもが泣き喚いてもいいから1日預けてみるということをしてみてもよかったのかなと思うんです。
- もし、人の手を借りることができていたら、どうよかったと思いますか?
佐藤さん:もっと子育てを楽しむ余裕を持てたのかなって。楽しくなかったわけではないんです。ただ、日々がいっぱいいっぱいで、子どもたちのことを「かわいい」と思う余裕があまりなかったんですよね。この生命を生かすことで精一杯だったので。
人の手を借りていたら、心に余裕が生まれて、もっといろんなところに遊びに連れて行けたかもしれないなぁと思います。
- 心の余裕って大切ですよね。
佐藤さん:疲れてきちゃうと、イライラもしちゃうので。
- 尼崎ふたごLINEの活動をするようになって、ご自身にとってよかったなと思うことはどんなことですか?
佐藤さん:一緒に成長を見守れることが楽しいですね。子どもが小さい時に、心に余裕を持って、ゆっくりと関われなかった分、関わらせてもらえているというか。
たとえば、抱っこも自分の子たちの時は“しないといけないからする”とか、“泣いているのを泣き止ませるためにする”とかみたいな感じでしていたけれど。今はほかの双子ちゃんたちを穏やかな気持ちで抱っこさせてもらっていて、あの頃にできなかったことができているのは嬉しかったりします。
自分自身がまだ子育てでしんどい時から始めて、仕事もしながらというのは大変だったけれど。あの時に始めていなかったら、どんどんしんどさや大変さの実感を忘れていってしまうので・・・今でさえ、この子たちが0歳の頃はどうだったかなと忘れていることも多くなってきていますから。
最初は子どもたちが4歳くらいになったら何かできたらいいなと思っていましたが、あの時に始めてよかったと思います。
- それって大事ですね。渦中にいるからこそ、今まさに悩んでいる方とも近い距離感で話すことができます。
佐藤さん:「忘れた」ではなく、近い記憶から少しずつ思い出しながら、向き合うことができたから。こうして活動しながらじゃないと、何も思い出さないまま、忘れていっていたと思います。
-
双子ママ座談会「双子の子育て、ざっくばらんにお話しください!」
vol.1 通院&健診・移動編
vol.2 沐浴・授乳・保育園見学・子育て情報編
vol.3 「つどいの広場」と「ふたごハウス」編
vol.4 助かる支援&サービス編
双子ママ座談会 番外編「双子の子育て、詳しく教えてください!」
vol.1 吉田(仮名)さんの場合
(0歳7カ月の双子のママ)
vol.2 鈴木(仮名)さんの場合
(1歳0か月の双子のママ)
vol.3 田中(仮名)さんの場合
(1歳4か月の双子のママ)
vol.4 佐藤(仮名)さんの場合
(4歳5か月の双子のママ)
-