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多胎家庭が本当に必要とする支援とは何なのかを考えるために、「ふたごハウス」に訪れる尼崎市内在住の双子のママ4人にご協力いただいて、座談会&個別インタビューを行いました。
子どもとの日々は「楽しい!」「嬉しい!」もあるけれど、そればかりではないのが現実。双子育児の日々で、どんな大変さや困難さがあるのかについて、ざっくばらんにお話しいただきました。
その内容をさらにうかがうべく、個別にインタビューした内容を紹介します。
3人目は田中(仮名)さん、1歳4か月の双子のママです。
出産後にホルモンバランスを崩していた時期に、地域の保健師による寄り添い&サポートを受けたことについて、お話をうかがいました。
※座談会は2023年11月、個別インタビューは2024年1月に実施。座談会&個別インタビューの内容を再編集して記事にしています。
- 座談会で「保健師さんに電話で『しんどいんです』とSOSを出した」というお話をうかがいました。それはいつ、何がきっかけだったんですか?
田中さん:0歳6カ月くらいの時ですかね。しんどかったんですよ。産む前は「私はメンタルを病まない」という自信があって、困ったり悩んだりした時につながる先を見つけておかなかったんですね。
そうなると、産んだ途端に孤独…サークル活動や交流会にも参加する気になれず。だって、テレビやインターネット上で人間関係の複雑さや大変さのほうがクローズアップされているのをよく目にしていたから、いいイメージを持っていなかったんです。
家で塞ぎ込むようになり、もやもやしていたところに、追い打ちをかけたのは新型コロナウイルス感染症…家族全員がバラバラに感染し、1人で2人の子どもをみながらの隔離生活で、ますます寝不足としんどさが募っていったんです。
このままの状態はよくないと自分で思ったから、保健師さんに電話しました。
- ご自身で「この状態はよくない」と気づけたのですね。
田中さん:出産後は「産後うつ」になりやすいと言われますが、私もホルモンバランスが崩れた影響を受けていたんだと思います。今から思えば、些細なことですごく気に病んだりしていたんですよね。
- たとえば、どんなことで気に病んでおられたのですか?
田中さん:月齢の近い子どもを育てる親戚や知人と比べてしまい、「子どもが1人だったら、お散歩に出かけられるんや。私は1人で2人を連れて、とてもじゃないけれど、出かけられない。ずっと家にいるしかない」ともやもやしたり。
知人から「母乳が一番の栄養だよ」みたいなことを言われた時、「ゆっくりと休んで、ごはんを食べてね」という、私のことを思っての一言だったんですけど。すでに母乳での授乳をやめていたので、「母乳じゃなくてすみません」みたいな気持ちになったり。
- 家の中にいると、どんどん自分の頭の中だけで思い詰めていってしまいますよね。
田中さん:もう、子どもという生命を育てるだけで荷が重いんですよね。息をしているか、日々生きているか、気が気でなくて。夫は7時半から20時頃まで不在ですし、近所で暮らす母も仕事をしていますから、日中はずっと自分1人で2人の子どもたちと向き合いながら、悲観的な気持ちにどんどんなっていってしまったんです。
出産前は子どもを虐待する親のニュースを見て、その気持ちがまったく理解できなかったんですけど。もしかしたら、自分ですべてを抱え込んでしまったんじゃないかな、子どもがかわいいと思えないまま子育てをするのはつらいと、想像するようになって。
- それぞれにいろんな背景があります。経験してみないとわからないことがたくさんありますよね。
田中さん:よく芸能人が言うじゃないですか、「出産した時、涙が出た」とか。私は実際に産んでどう思ったかを正直に話すと、「え? これで出産は終わり?」だったんです。あと、「人が出てきた」という感動くらいで。子どもたちが生まれたからと言って、気持ち的に何かが変わったとは感じなくて。
出産はすごく美化されていますけど、そんなもんじゃないんじゃないかなと。もちろん、あとから「生まれて来てくれてありがとう」という気持ちで満たされていくんですけど。産んだ瞬間は、それまで見聞きしてきた感動的な出産体験とはかけ離れていて、「え?」みたいな感じで、これから日々の育児が始まるんだという感じでしたね。
- 産んで終わりではなく、現実が続いていきますもんね。「この状態はよくない」からSOSを出そうとなれたのはなぜですか? 冷静に自分自身の危機に気づけたのはどうしてだったのでしょうか?
田中さん:時々、自分の時間を持つことができていたからではないでしょうか。母や前の職場の先輩がしゃべりに来てくれていたことがよかったんだと思います。母は犬の散歩のついでに立ち寄って「今、子どもたちを見ておくから。ごはん、ゆっくり食べて」と手伝ってくれましたし、毎日しゃべることで気分転換もさせてくれました。
また、出産前まで近所の職場で働いていて、当時の先輩たちとはずっと仲が良く、休憩時間に遊びに寄ってくれて話し相手になってくださっていたんです。時には「気分転換に飲みに行こう!」と誘ってくださり、2度ほど、夫や母に預けて飲みに出かけたこともあります。先輩たちも子育て経験者で、中には産後うつを経験した先輩もいて、「しんどいんですよ。
でも、心療内科に行くほどではないのかな」と話したら、「1回、行ってみたら?」と経験談を話してくださって。そういう時間を持てたから、気づけたのかなと思います。
- どうして、保健師さんに相談しようと思ったのですか?
田中さん:保健師さんが、妊娠中も出産後も、電話をかけてくれたり訪問してくれたりと、何かと気にかけてくださっていたんですよね。妊娠中に「関係性ができていないと、悩みとか言われへんから」と電話をかけてきてくれて、いつも「何でも言ってね」と言ってくれていたので、相談できたんだと思います。
正直、妊娠中は「なんで、こんなに電話してくるんやろう?」と少し煩わしさを感じるくらいだったんです。その当時、仕事をしていましたし、つわりで気分が悪く、昼休み中は寝たかったので。特に悩んでいることもなかったですから、保健師さんとやりとりする必要性も感じていなかったんですよね。
でも、0歳4カ月の時に1人で2人の子どもを大きな病院に連れて行かなければならなくなって不安になった時に相談したら、一緒について来てくれたことがあって。関係性ができていたことも大きかったです。
「産後うつ専門の心療内科に行ってみようと思っているんです。どこか、いいところを知りませんか?」と相談したら、会いに来てくれて、予約もしてくれて、心療内科に行きました。
- 当初「自分が心療内科にかかるなんて」と思っていたとのことですが、実際に行ってみてどうでしたか?
田中さん:心療内科には2回ほど行ったでしょうか。話を聞いてもらって少し楽になりました。あとは時間薬といいますか、月日とともに快方に向かっていったという感じです。やっぱり、話を聞いてもらうことが大切なんだなと思いました。
誰にも自分の抱えている気持ちを言えなかったら、つらい育児になっていたと思うんです。子どもを産んだら、話を聞いてくれる人は家族くらいしかいなくなります。
友だちと会ってしゃべりたくても、2人の子どもが泣いてそれどころではなくなるし、日々寝不足でそんな余裕さえない。約束しようにも、1日1日で何があるのかが予測できないから、簡単に約束ができないんですよね。
そうなると、話を聞いてくれる人が家族、母しかいなくて・・・母は話を聞いてくれるんですけど、家族だから私に対して言いたいこともいっぱいあったと思うんですよ。それを我慢してくれてるんやろうなと、頭のどこかで思っちゃうから。
家族ではない誰かにも話を聞いてもらうことが大切なんじゃないかなって。
- 家族ではお母さま、家族以外では前の職場の先輩や保健師さんが話を聞いてくれたんですね。保健師さんとはその後、どんな関係性ですか?
田中さん:心療内科に行った後、報告したら「よかったね」みたいな感じで。健診の会場でお会いした時に、いい保健師さんやなと改めて思った出来事があって。
夫と一緒に行ったんですけど、夫と言っても他人ということで、夫と離れたところで「どうやった?」「大丈夫?」と私の話を聞いてくれたんです。プライバシーに関わるところだからと配慮してくれたんですよね。
常に寄り添ってくれて、些細なことも含めて、いろいろ話を聞いてもらいました。まだ渦中にいた時は、自分が立ち直る未来なんて見えていないじゃないですか。ずっとこのままだったらどうしようという不安もあって、「保健師さんのこと、いつまでこうして呼んでもいいんですか?」と聞いたんです。
そしたら「いつでも電話してくれていいよ」と言ってくれたのが嬉しかった…もちろん、極力1人でやっていこうと思っていますけど。そう言ってもらえるのと、「子どもが1歳になったら1人で頑張って」と言われるのとは全然違うから。
- 「困った時に頼れる人がいる」と思えることだけでも心強いですよね。
田中さん:そうなんです。産んでみないとからないことがたくさんあるので。前の私みたいに、それまでの経験から自分は大丈夫、メンタルが強い、心療内科にはかからないなんて思わず。妊娠中から困ったら相談できる場所や悩み事を言える場所を2カ所くらいはつくっておいたほうがいいと思います。
私にとってのそんな場所は、実家と保健師さん、そして今はふたごハウスです。
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双子ママ座談会「双子の子育て、ざっくばらんにお話しください!」
vol.1 通院&健診・移動編
vol.2 沐浴・授乳・保育園見学・子育て情報編
vol.3 「つどいの広場」と「ふたごハウス」編
vol.4 助かる支援&サービス編
双子ママ座談会 番外編「双子の子育て、詳しく教えてください!」
vol.1 吉田(仮名)さんの場合
(0歳7カ月の双子のママ)
vol.2 鈴木(仮名)さんの場合
(1歳0か月の双子のママ)
vol.3 田中(仮名)さんの場合
(1歳4か月の双子のママ)
vol.4 佐藤(仮名)さんの場合
(4歳5か月の双子のママ)
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