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多胎家庭が本当に必要とする支援とは何なのかを考えるために、「ふたごハウス」に訪れる尼崎市内在住の双子のママ4人にご協力いただいて、座談会&個別インタビューを行いました。
子どもとの日々は「楽しい!」「嬉しい!」もあるけれど、そればかりではないのが現実。双子育児の日々で、どんな大変さや困難さがあるのかについて、ざっくばらんにお話しいただきました。
その内容をさらにうかがうべく、個別にインタビューした内容を紹介します。
1人目は吉田(仮名)さん、0歳7カ月の双子のママです。
吉田さんが利用中の「尼崎市 産前産後ヘルパー派遣事業」のこと、「子どもが泣いていること」への1人子育てママとの感覚の違いを感じた出来事、日々睡眠不足で心身ともに追い詰められそうな時のバランスの取り方について、お話をうかがいました。
※座談会は2023年11月、個別インタビューは2024年1月に実施。座談会&個別インタビューの内容を再編集して記事にしています。
- 座談会で産前産後ヘルパー(※)を利用されているとうかがいました。主に、どんな時に利用されていますか?
吉田さん:たとえば、通院や予防接種、健診、保育園見学時など、物理的に大人の手が必要な時に限りますね。1週間以上前に予約しなければならないので、急病などでは利用できないんですよね。
- 利用するきっかけは何だったのですか?
吉田さん:尼崎ふたごLINEで「産前産後ヘルパーが始まります」というお知らせを先に得ていたんですよ。利用するかどうかは別にして、登録は無料だから何かあった時のためにしておこうと思って、まずは登録しました。
出産後、もっと早くから利用したかったのですが、産前産後ヘルパーの事業開始が2023年7月だったので。それまでは母の協力を得ながら、なんとかしのいでいました。最初の利用は保育園の見学でしたね。
- 家事援助として「食事、洗濯、掃除、買い物など」、育児援助として「授乳支援、おむつ交換、沐浴介助、兄姉児の世話、保育園等の送迎、外出の付き添いなど」とされていますが、外出の付き添い以外には利用されたことはありますか?
吉田さん:基本は1日につき2時間までですが、外出の付き添いに限り1日4時間まで利用可能なんです。だから、外出が早めに終わったら、その後で買い物に付き合ってもらったり、沐浴を手伝ってもらったり。あとは家事。
料理や皿洗い、風呂掃除などをしてもらったことがあります。実は、もともとのルールでは「外出の付き添いによる時間延長は外出に関することしかできません」だったんです。
- 「もともとのルール」ということは途中で変更があったんですね。
吉田さん:そうなんです。子どものことなんて予測できないじゃないですか。病院に行ったら、その時々で混雑状況も異なりますから。予約時に「3時間で」としていても、その時間内に終わらなかったら、バスの中でさよならするわけにもいかないので。外出時は最大時間の4時間でお願いしているんです。
もし外出から早く帰ることができた場合、4時間分の利用料金を支払っているのにどうしたらいいのか・・・無理かなと思いながら、来年度以降に利用する人にとって、もっと利用しやすい制度になったらいいなと思い、市役所に電話して意見を伝えてみたんです。
そうしたら、検討してくださって、外出が早く終われば家事などの手伝いをしてもらってもいいとルールを変更してくださったんですね。
- どんなふうに意見を伝えたんですか? 市の方に話した内容を教えてください。
吉田さん:通院先の病院に行くのに、移動手段としてまず、バスしかないんです。大きな病院ですから、たくさんの人が通院で来るので、待ち時間が長い! 最大で1時間半ほど待ったこともあります。そんなことがないように、予約は朝一の時間帯にするなど、できる工夫は全部しているんですけど。
それでも、たとえば診療後に授乳の時間が来たら、帰りのバスでギャン泣きされたら困るので、病院でミルクを飲ませてから帰るほうがいいなど出てくるわけです。そんなふうに想定外の出来事も起き、どれくらい時間がかかるのかが予測できないから、最大時間での利用時間で予約をとるしかない。
利用料金は10分単位ではなく、1時間単位でしか支払えないので、たとえば3時間1分で家に着いたら、あとの59分は帰ってもらうしかなくなります。
私としては日々しんどい中で外出は大変やけど、早く帰れた時に沐浴を手伝ってもらえたらすごく助かるのに・・・それができないと言われたら、精神的にちょっとしんどいですという話をしました。
- 外出時の時間の予測はつかないですから。時間が余れば、ほかの援助もしていただけると助かりますよね。
吉田さん:少しでも子育てが楽になるようにと、こうした制度をつくってくれたのに、ちょっとクレームみたいな感じになってしまったかなと申し訳ない気持ちはありつつ。話を聞いてくださり、現状を知ってくださり、必要だと思ってくださったからこそ、変えてくださったので。ありがたかったですね。
※尼崎市 産前産後ヘルパー派遣事業
市内在住の妊娠中や1歳未満の子どもがいる家庭の家事や育児をサポートする制度。尼崎市と契約した事業所からヘルパーを派遣する。詳細は市ホームページ参照。
https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/kosodate-kyoiku/kosodate/syussan/1033728.html
- 子どもを泣いたままにしていると、「そのままにしている」と思われるのが不安だとお話になっておられました。実際に、何か言われた経験があるのですか?
吉田さん:ありますよ。つどいの広場で1人子育てのママと話していた時のことなんですけど。こんな話をしたんです。
「1人がずっと泣く子で。私も毎日睡眠時間がなくて、白目をむいて1人を抱っこして寝かせるも、もう1人は抱っこをしてもなかなか寝てくれなかったから。子どもが泣き疲れて寝ることがあると聞いたので、1度どのくらい泣いたら、泣き疲れて寝るのかなと試してみたんです。そしたら、2時間半くらいずっと泣いていたんですよ」と。
そしたら、そのママから「私やったら、我慢できひん。抱っこする」と言われて。
いやいや、我慢とかじゃないねん。こっちは白目をむいて、しかも、もう1人を抱っこしてる。自分も横にならへん状態で極限状態やから。
自分もできるなら抱っこしたかったけど、すでに1人を抱っこしてる状態やから無理と、諦めの境地に入っているのを、1人の子育ての場合はその感覚が共有できないんだと思いましたね。
- 経験がないと、どんな状況にあるかをなかなか想像できないかもしれませんね。
吉田さん:この子たちがハイハイで動くようになったら、つどいの広場でも1人を追いかけているうちに、もう1人がほかのところで何かしたり泣いたりしていて。
そうしていると、だいたいはスタッフさんやほかのママが見たりしゃべったりしてくれていて、ありがたいなぁと思う半面、家だったら危険なことがない限りは放置しているなと思うわけです。そうじゃないと、2人もいるので延々とあやし続けることになって、何もできないから。
ただ、つどいの広場では、ほかのママがあやしてくれているのに、自分が何もしないわけにはいかないので、他者に見える形で「気にしていますよ!」と見せないとあかんという・・・その辺の感覚は違うなと思います。
- そうした部分で傷ついたこと、しんどかったことはありますか?
吉田さん:その場はもう、まわりへの申し訳なさしかないです。
- それが自分自身を責めることにはつながらなかったですか?
吉田さん:自分を責めるなんて日常茶飯事ですから。たぶん、日常的にみんな、そんな感じじゃないですか。
だって、双子を連れて歩いていたら、電車に乗る時も「横幅が大きくてすみません」という感じですし。道を歩いていても、狭い道だったら向かいから来た人にとっては狭くなっちゃうから、この道を通るのはやめておこうとなるし。日常的にそんな感じです。
- 自分を責めてしまう気持ちを、どうしていますか?
吉田さん:どうしているんだろう。姉と電話することで解消していることが多いですかね。姉が通勤時間中に電話をかけてきてくれるんです。週に2~3日、30分ほどしゃべる時間があるから、心が救われているんじゃないでしょうか。
- どんなお話をされるんですか?
吉田さん:子育てとは全然関係のない話をすることもあれば、姉の子育て経験談を聞くこともあるし、姉の仕事の愚痴を聞くこともある。いろいろ、何でも話しています。
- その時間が、吉田さんにとってどんな時間になっていると思いますか?
吉田さん:姉が「生きているだけで120点やから」と言ってくれるから。自分を責めていても、その言葉でリセットされたりしますね。私は以前、うつになって、診療内科に通っていたことがあるんです。
- いつのことですか?
吉田さん:大学生の時です。その時の教訓として、家にこもるとどんどんマイナス思考になるから。身体が元気な時は、できるだけ外に出ることを増やしたり、人に会う約束をつくったり。家で1人でずっと子どもたちを見ている状態が一番大変なので。出かけると、身体的には疲れるけれど、精神的には回復できるんですよね。
- 自分1人で2人を連れて出かけること自体が大変でしんどいことでもある中、ストレスはなかったですか?
吉田さん:ぎゅっと詰まってきたら、身体も疲れていることが多くて、出かけるのもしんどくなってくるから。そうなる前に、毎日とは言わないけれど、2日に1回、1時間はつどいの広場やふたごハウスに出かけたり、誰かに会いに来てもらう予定を立てたり・・・あとは大人としゃべる時間をつくる。
私の場合、定期的に通院する必要があり、その時は産前産後ヘルパーさんに来てもらうので、バスでの移動中や沐浴を手伝ってもらっている間にしゃべることが息抜きになっています。あとは、カレンダーを見ながら「この週は何も予定が入っていないから危険だな」と気にして、予定を入れるようにしています。
- そうやってバランスをとっているんですね。
吉田さん:身体は休めばなんとかなるかもしれないんですけど、精神的なものはだいぶしんどくなってしまうから。あとは、自分では無理をしていないつもりでも、まわりからは無理しがちと言われるから。さぼれるところはさぼるようにしています。
家事でも、洗濯は毎日やらないといけないんですけど、ごはんをつくることができなかったら、夫に「帰りに買ってきて」と言ったりしていますね。
- 子育てを始めてからどんなところで、ぐっと追い詰められそうになりますか?
吉田さん:睡眠時間が足りていない時が一番しんどいです。
たとえば、最近も1人が先に寝て、もう1人が24時くらいにやっと寝たと思ったら、先に寝ていた子が1時半に起きてきて、ミルクを飲ませてあやしたら寝てくれたので、私も少し寝て。そしたら、次は4時半くらいに2人とも起きて、ミルクを飲ませて1人は寝たんですけど。もう1人はずっと寝なくて、寝ている1人を起こそうとするから、見張ることにしたんです。
布団から出て遊ばせたり、ぐずったらずっと抱っこしたり・・・それで6時になってようやく寝てくれた、やっと私も寝られると思っても、次は寝ていた1人が8時に起きてきてみたいな感じで。続けて3時間も寝られないんですよね。1~2時間の睡眠が細切れに何回かあるという感じで。
- それがずっと続いているということですよね。
吉田さん:日にもよりますけど。夜も抱っこしないと泣くとなると、私は布団では寝られないので。立って抱っこして30分くらい頑張って、その後に座椅子で私も横になりながら、1人はうつ伏せが好きやから座椅子に座っておなかの上に乗せて、トントンしていたら、寝てくれることもあって。
でも、もう1人は布団に寝かせようと動かすと起きるから、そのままの状態で・・・私は手足だけこたつに入れて、そのまま寝るしかないみたいな。そんな日が続くと、結構しんどくなってきます。
- 日中に昼寝を・・・というのもできないですもんね。1日がまた始まったら。
吉田さん:同時に2人が昼寝してくれたら、寝られるんですけど。昼寝しても15分だけだったり、毎日寝る時間もバラバラだったりするので。
最近は夜中、ミルクを飲んでも寝ないだろうなと感じる時は、布団に戻ってもまた泣かれて出ないといけなくなりますし、自分が布団に入ることで眠くなると余計にイライラしてしまうので、寝るのを諦めます。スマホを触ったり、寒い空気を浴びたりして・・・「ほら、やっぱり、寝えへんかったわ」と、あやす時にイライラしないようにする技を身に付けていますね。
あと、寝られない日が続いて精神的にきつくなった時は、姉に電話して話します。「聞いて、聞いて! 昨日さ、交互で起きたり寝たりしてさ」と話すと、「すごいやん。シフト制、ひいてるねんで。昼寝もバラバラなんやろう? シフトに穴を開けたらあかんと思ってるねんで」と笑かしてくれて。
子育て経験者、強すぎやろうと思って(笑)。
- そうやって話して気持ちを変えているんですね。
吉田さん:そうです。もし睡眠時間が増えなかったとしても、そういうふうに話せる相手がいるだけでも、気持ちが変わりますね。子育て経験者で、そのつらさもわかってくれてというのが、心強いです。
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双子ママ座談会「双子の子育て、ざっくばらんにお話しください!」
vol.1 通院&健診・移動編
vol.2 沐浴・授乳・保育園見学・子育て情報編
vol.3 「つどいの広場」と「ふたごハウス」編
vol.4 助かる支援&サービス編
双子ママ座談会 番外編「双子の子育て、詳しく教えてください!」
vol.1 吉田(仮名)さんの場合
(0歳7カ月の双子のママ)
vol.2 鈴木(仮名)さんの場合
(1歳0か月の双子のママ)
vol.3 田中(仮名)さんの場合
(1歳4か月の双子のママ)
vol.4 佐藤(仮名)さんの場合
(4歳5か月の双子のママ)
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