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【「ふたごハウス」居場所づくりのトライアンドエラー vol.4】 防火対策は大丈夫? 防火対象物使用開始届出 編

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兵庫県尼崎市にオープンした、多胎家庭のママパパが集い、交流したり相談したりできる居場所「ふたごハウス」。この場所でさまざまなことに挑戦し、理想的な居場所を少しずつ実現していきたいと考えています。その過程で、私、NPO法人つなげる代表理事の中原美智子が直面したさまざまな出来事を「『ふたごハウス』居場所づくりのトライアンドエラー」シリーズとして、お話ししていきます。

3回目となる今回は、「防火対策は大丈夫? 防火対象物使用開始届出」編。公衆浴場営業許可申請をしたことにより、防火対象物使用開始届出もしなければならないことが発覚。みんなの安全・安心のために守るべきルールの数々。この一連の出来事を通して得た気づきや学びについてお話しします。

※これからお話しすることは「尼崎市での、私の事例」です。詳細は各自治体にお問い合わせください。

公衆浴場の営業許可申請を機に知った、消防法関係

尼崎市保健所生活衛生課から尼崎市消防局北消防署へ、「公衆浴場営業許可申請書を提出している場所があるので、建物として消防法上で問題がないか確認してください」との連絡がいき、「防火対象物使用開始届出書と防火対象物概要書という書類を提出してください」と、私に電話がかかってきました。

防火対象物使用開始届出とは、建物を誰がどんな用途で使用しているのか、消防法上で必要な設備などが設置されているかなどを把握・確認するためのものです。後から知ったのですが、建物を使用開始する7日前までに届け出るように義務づけられているとのこと。もし届出が遅れると、使用開始後に必要な設備などがないことが発覚し、設置・工事などが必要になってくる可能性があります。

書類はインターネット上で公開されているので、印刷して記入してから持参することになりました。

防火対象物使用開始届出書と防火対象物概要書、添付書類(地図、建物ワンフロアの図面、室内間取り図)の作成にも、またまた苦労しました。

敷地面積や建築面積、延べ面積、構造といった建物全体の詳細なデータが必要になり、「建築確認済証(建築基準法令に適合している建物であることを証明する書類)」を見ないと面積などがわからないのですが、古い建物がゆえに手に入れるのが困難だったんです。再発行してもらえないからどうする?という状況に陥りました。

保健所やREHUL事業の担当者が知恵を絞ってくださり、「建築物台帳等記載事項証明」で代用できるということになりました。

2023年33日に、消防署に書類を持参。その際、REHUL事業の担当者も同行してくださったので、消防署の担当者からの質問や確認事項で、私ではわからない建物に関わる部分についてはフォローしてもらいました。とても助かりましたね。

ここで子育てひろばをできなかった可能性も

翌週の38日、消防署の担当者がふたごハウスに現地確認に来てくださいました。今回、保健所から話が伝わっていたおかげで、銭湯としてではなく、子育てひろばとして消防法上で問題がないかどうかを確認してくださることに。顧問弁護士・知識弘恵さんも同席してくださったので、心強かったです。

今回も「えぇー!知らなかった」とびっくりすることばかり。わたしが印象に残ったことを3点、ピックアップしますね。

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(1)ふたごハウスがある場所は市営住宅。住居のため、それ以外の用途で使用する場合は、「延べ面積の10%未満でかつ300平方メートル以下(=みなし従属として適用される範囲)」でなければならないんです。ふたごハウスは50平方メートルだったのでセーフ。その基準内でなければ、ここでは子育てひろばを開けないところだったんです。

(2)防火対象物(=建物)の用途ごとに収容人員が決められています。防火の観点から、たくさんの人たちが集まると危険だからです。算定方法を使って、床面積から何人までかを割り出します。ふたごハウスの場合は「23人」でした。

(3)建物の用途や規模、収容人員に応じて、「防火管理者」が必要になります。防火管理者とは、火災などによる被害を防止するため、消防計画を作成し、防火管理業務を行う責任者のこと。防火対象物全体(ふたごハウスの場合は市営住宅全体)で考えるので、全体で50人以上が居住していたら防火管理者が必要になると言われました。この市営住宅の防火管理者は市の管理センターの担当者で、今回はREHUL事業という市の事業を利用していることもあり、その方がまとめて担ってくださることになりました。

たとえば、民間の住宅だった場合は、住宅側に防火管理者がいても、見ず知らずの団体の責任までとることはできないという理由で担ってもらえない可能性があります。その場合は、防火管理講習(2日間)を受講すれば、防火管理者になることができます。

私の場合は結果的に、防火管理講習を受けなくてもクリアできたのですが、小さな多胎児を抱えた家庭は災害弱者になりうるので、多胎家庭のママパパの力になれるように、機会を見つけて受講したいと思っています。

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手続き開始から約4ヵ月後。沐浴のお手伝いができることに

訪問してくださった消防士の方々が「こんな場所があると、みなさん、嬉しいでしょうね」と言ってくださり、またまたほくほくとした気持ちになりました。

後日、防火対象物使用開始届出書と防火対象物概要書の届出済の印が押されたものを取りにうかがって、消防関係については終了。これですべて終わり! ではなく、まだまだ続きました。

消防署から保健所へ、「建物として消防法上での問題はないです」との連絡がいき、今度は保健所から「建築確認済証が必要なので、持ってきてください」と言われたんです。

そう、建築確認済証。古い建物がゆえに手に入れるのが困難だったものの、建築物台帳等記載事項証明で代用できてクリアとなったはずなのに・・・! また、新たな問題が出てきたんです。建築物台帳等記載事項証明の住所と現住所が一致せず、書類上では“異なる建物”になっていて、この問題をどう解決するのかを保健所で確認・調整してもらうことに。

それから待つこと、約1ヵ月半後。5月16日、ついに公衆浴場営業許可が下りました! 525日に沐浴の手順などを確認し、6月6日から沐浴を行っています。月数回だけでも、ワンオペお風呂タイムの緊張から解かれますように。そのお手伝いができたら嬉しいです。

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「こんな支援があったら」に立ちはだかる、高い壁

公衆浴場営業許可申請に奮闘する日々の中で、ふと思い出したことがあります。

以前、尼崎市のある公共施設を見学させてもらった時、そこにはシャワー室とランドリーが設置されていました。シャワー室があるから、ここでなら赤ちゃんの沐浴会をさせてもらえるかもしれないと、センターの方に「どうして、シャワーを設置しているんですか?」と質問したところ、施設に来る子の中にお風呂になかなか入れない家庭環境の子がいて、その子がシャワーを浴びて洗濯もできるように設置されたとのことでした。

私はてっきり、そばに砂場があるから、子どもたちが泥んこ遊びをした後に浴びるために必要なのかなと想像していました。しかし、1人の子への愛ある思いから設置されたんだと知って感動。同時に、どうしてシャワーなんだろうと少し疑問にも思ったんです。シャワーよりも浴槽でお湯に浸かれた方が気持ちいいのになぁ、スペース的に無理だったのかなぁと思っていました。

でも今回の経験で、浴槽が設置できなかったのは、銭湯を始めるのと同じくらいの設備投資や手続きをしなければならないからなんだと気づきました。銭湯メインの施設ではないから、そこまでは難しいですよね。

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ふたごハウスの場合は、たまたまお風呂場と脱衣所とトイレが1カ所に集まっていて、脱衣所にはカーテンレールがあったので周囲から見えないように仕切ることもできました。大がかりな工事や設備投資の必要もない、たまたまラッキーな間取りだったんです。あと、沐浴で入浴するのは乳幼児1人だけで、複数人は入らないこともよかったんです。これが「複数人の子どもが入ります」だったら、基準緩和をお願いできなかったかもしれません。

もし、「場所を借りてこんなことをやりたい!」という思いがあるのでしたら、物件を借りる前に保健所と消防署に行って、その物件で実現できるかどうかを先に確認してみる方がよさそうです。また、沐浴支援を行う場合は、「尼崎市にはこんな沐浴の基準緩和事例があるので、こういう形でやりたい」と伝えてみていただけると、相談しやすいかもしれません。

次回は「炊いたごはんの提供にも営業許可が必要?」編。ここを訪れたママパパにコーヒーを淹れたい、ごはんを炊いてレトルトカレーを一緒に食べたい・・・と考えるも、これを実現するにもカフェ営業の許可をとる必要があるのでは?ということに・・・まだまだ続く、トライアンドエラーについてご紹介します。

「『ふたごハウス』居場所づくりのトライアンドエラー」シリーズ

「プロローグ」編
「一歩を踏み出そうと心を決めるまで」編
「沐浴だけど銭湯?! 公衆浴場営業許可申請」編
「防火対策は大丈夫? 防火対象物使用開始届出」編 (現在の記事)
「炊いたごはんの提供にも営業許可が必要?」編

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