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【「ふたごハウス」居場所づくりのトライアンドエラー vol.3】 沐浴だけど銭湯?! 公衆浴場営業許可申請 編

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兵庫県尼崎市にオープンした、多胎家庭のママパパが集い、交流したり相談したりできる居場所「ふたごハウス」。この場所でさまざまなことに挑戦し、理想的な居場所を少しずつ実現していきたいと考えています。その過程で、私、NPO法人つなげる代表理事の中原美智子が直面したさまざまな出来事を「『ふたごハウス』居場所づくりのトライアンドエラー」シリーズとして、お話ししていきます。

2回目となる今回は、「沐浴だけど銭湯?! 公衆浴場営業許可申請」編。「お風呂場があるから沐浴のお手伝いをしよう」くらいに考えていたところ、銭湯などを開業するのに必要な公衆浴場の営業許可をとらなければならないことが発覚。許可をとるべく、関係各所の協力を得ながらどのように進めていったのかということについてお話しします。

※これからお話しすることは「尼崎市での、私の事例」です。詳細は各自治体にお問い合わせください。

お風呂場があるから、沐浴ができると思ったのに

多胎家庭のママパパが集って、おしゃべりしてもらえたらなぁ。身体を少しでも休められるように、お昼寝もできたらいいよね。一緒に、離乳食をあげたり、夕食を食べたりできたら、楽しいだろうなぁ。一般的な子育てひろばは15時頃までだけど、ここは夕方まで開けておくんだ。沐浴のお手伝いをするんだー。

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そんな風に、市営住宅という“家”だからこそできることがたくさんあると思っていたけれど、すべてが簡単に実現できるわけではありませんでした。まさか「公衆浴場営業許可申請」が必要になるなんて、少しも想像していませんでしたね。

「公衆浴場」というと、銭湯じゃないの? ふたごハウスでやろうとしていることと何の関係があるの? と、不思議に思われるかもしれません。私もそうでした。「お風呂場があるからできるやん!」くらいに思っていたのが、赤ちゃんの沐浴をするにも、公衆浴場営業の許可が必要だったんです。

「ふたごハウスをオープンしたら、沐浴のお手伝いをする」とホームページやSNSで発信したところ、NPO法人つなげるの顧問弁護士の知識弘恵さんが「もしかしたら公衆浴場営業の許可をとる必要があるかもしれないので、確認してみてくださいね」と教えてくれたんです。それが2023117日のことでした。

早速、尼崎市のホームページで調べると、「公衆浴場とは温湯、潮湯又は温泉その他を使用して公衆を入浴させる施設をいい、いわゆる銭湯の他、スーパー銭湯、スポーツジムやエステ等に併設されたお風呂、サウナ、岩盤浴等も公衆浴場に該当します。 *シャワーのみの施設は公衆浴場に該当しません。」とありました。

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シャワーだけではなく、沐浴のためにベビーバスを使うので、許可をとらなければならない・・・沐浴のお手伝いをしたいだけなのに、銭湯を開業するくらいの設備投資や手続きをしなければならないなんて、とてつもなく壁が高く感じられますよね。多胎家庭のママパパから沐浴の困り事はよく聞くのに、どこもやっていなかったのはこの壁の高さがあるからなんだと納得しました。

知識さんとのこのやりとりは真夜中にしていたんですが、もう血の気が引きましたね。「こんなことをしたい!」と思うたび、その気持ちを挫くような、高い壁が立ちはだかるんだなぁと気弱になってしまいました。

でも、知識さんから「自分自身の経験からも、双子の沐浴支援というのは非常に重要なことだと思っています。もし、この居場所で双子のお風呂を終えて家に帰れたら、お風呂に入れるという苦行をしなくて済むわけで、親の負担は格段に軽くなると思います。おそらく大丈夫だとは思いますが、もし、うまくいかない場合には声をかけてください」とのメッセージが。

「難しいから」「ややこしいから」「大変だから」と諦める方向に進むのではなく、どうしたらいいかを一緒に考えてくれる人が1人でもいるという現実を実感して、シュンとしぼんだ気持ちにあったかい空気を吹き込んでもらえたような感覚になりました。支援とは、可能性を信じ続けることを言うんだなと感じましたね。

だからかな。その日のうちに立ち直ることができたんです。根拠もないけれど、やりきれると思えました。

一つひとつ、やるべきことを地道にクリアしていく

翌日の118日には早速、尼崎市保健所生活衛生課に電話で問い合わせました。

「乳幼児の沐浴をお手伝いできる場にしたいんですけど、それを行うにも公衆浴場営業許可をとる必要はありますか?」と聞いたところ、「不特定多数の人を対象とする=ふたごハウスに訪れる人たち」「反復継続の意思を持っている=長い間何度も繰り返し行う意思がある」ということで、公衆浴場営業許可はとる必要があると教えてもらいました。

ただ、やはり沐浴での届け出は珍しいケースのようで、保健所の担当者から「このような利用目的はこれまでなかったから」と言われました。それからも電話で何度か目的や用途などを伝え、細々とした調整をしながら、214日に窓口にうかがい申請書類をもらいました。

申請書類を提出するにあたって、どんなサービスを提供するのかなどを企画書にまとめたり、風呂場と脱衣所・トイレの図面を書いて寸法を測って面積を出したり、どんな手順で沐浴を行うのかを文章で説明したり、衣類などを置ける脱衣箱の設置など環境を整えた上で風呂場まわりの写真を撮って資料にしたり、市営住宅内の配置図を書いたり、周辺250m範囲の地図を用意したりなど、いろんな書類を作成しなければなりませんでした。

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浴室・脱衣所・トイレの図面。フリーハンドでもいいと言われていましたが、つなげるピアサポーターの中に二級建築士のtomoさんがいて、「よかったら、図面をひきましょうか?」と申し出てくれました。出来上がってきた本格的な図面! 彼女の多彩さに、いつも助けてもらって感謝しかありません。

必要な書類を揃えて、222日に「公衆浴場営業許可申請書」を提出しました。

申請時には、手数料として22000円かかると知り、つい「毎年かかるのですか?」と聞いちゃいました。申請時だけとのことですが、ふたごハウスの運営費のめども立っていないのに、この22000円は痛かったんです。そんなつぶやきも、記録として書き残しつつ・・・

提出後、31日に、保健所の担当者がふたごハウスへ現地確認に来てくださいました。事前に提出した図面に相違がないか、沐浴用ベビーバスや湯温などを確認してもらいました。

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カーテンは市販のものではサイズが合わなかったため、私の母が手縫いして作ってくれました。脱衣棚は、ふたごハウスに来てくれていた双子ちゃんと一緒にネジ巻きをして組み立てました。私にとっては、そんな思い出もつまっている書類作成でもあります。

沐浴での営業許可は珍しいケース。基準緩和を申立て

「公衆浴場法」や「公衆浴場における衛生管理要領」では、さまざまなルールが細かく定められています。今回、銭湯ではなく沐浴をするだけということで、基準を緩和していただけるようにお願いした項目がありますので、紹介しますね。

(1)浴室は男女を区別し、その境界には隔壁を設け、相互に、かつ、屋外から見通しのできない構造であること

利用者は乳幼児(06歳未満)で、利用時は乳幼児の保護者とスタッフのみが立ち入るため、性別による区分と境界の隔壁設置は適用なしでお願いしました。

(2)男女それぞれの脱衣室等入浴者が利用しやすい場所にそれぞれ便所を設けること

「(1)」の理由から性別による区分は適用なしでお願いし、トイレについては脱衣所として使用する洗面所にあったので、問題ありませんでした。もし、トイレが風呂場から離れている場所にあったら、「その場所までを脱衣所として設定する」などの対策が必要になっていたと思います。

(3)浴室の床面積

ふたごハウスの場合、浴室の床面積は「12平方メートル以上」が必要とのこと。でも、「(1)」と同じ理由で適用なしでお願いしました。

(4)循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策の実施

銭湯等の循環式浴槽や、家の追い焚き機能付きの浴槽の場合は、レジオネラ属菌が発生・増殖する可能性があるので、検査の仕組みや対策を行わなければなりません。これについても、もともと設置されている浴槽を使用せず、ベビーバス2個を使用・1回ずつ排水するので適用なしでお願いしました。

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今回、こうした基準緩和の申立てができたのは、沐浴をするために公衆浴場営業許可申請をするということを、保健所の担当者が理解してくださっていたからだと思います。

もちろん、必要最低限の清掃をはじめ、脱衣所に衣類やタオルを置くための棚設置、外から見えないようにするためのカーテンでの仕切り、入浴中に保護者やスタッフ以外が間違って入室しないようにするためのアナウンスなど、守るべきところは守る必要があります。

でも、乳幼児の沐浴のためなのに、銭湯と同じ決まりでなければならないのかを保健所のみなさんで考えてくださって、申立書を作成して基準緩和できるようにしてくださったんです。申立書も、保健所でベースを作成してくださいました。

「沐浴を手伝えるように」と知恵を貸してくださった保健所のみなさんの気持ちがありがたく、たくさんの人たちが多胎家庭を応援してくれているんだなと思うと、ほくほくとした気持ちになります。

そして、公衆浴場営業許可申請をしたことによって、消防法関係で消防署とのやりとりが始まります!

次回は「防火対策は大丈夫? 防火対象物使用開始届出」編。公衆浴場営業許可申請をしたことにより、防火対象物使用開始届出もしなければならないことが発覚。みんなの安全・安心のために守るべきルールの数々。この一連の出来事を通して得た気づきや学びについてご紹介します。

「『ふたごハウス』居場所づくりのトライアンドエラー」シリーズ

「プロローグ」編
「一歩を踏み出そうと心を決めるまで」編
「沐浴だけど銭湯?! 公衆浴場営業許可申請」編 (現在の記事)
「防火対策は大丈夫? 防火対象物使用開始届出」編
「炊いたごはんの提供にも営業許可が必要?」編

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